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生活習慣病

生活習慣病とは

生活習慣病とは生活習慣病は、1つの疾患を指しているわけではなく、遺伝的な体質と食べ過ぎ・飲み過ぎや偏った食生活、嗜好品(タバコやお酒)の過剰摂取、運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れが原因となり発症する疾患をまとめて呼びます。
健康診断で高血圧や高コレステロール血症、尿酸値が高いなどの異常が判明した場合、生活習慣病を発症している可能性が高いです。生活習慣病は、日本人の死亡原因に多い「心臓疾患」、「悪性新生物(がん)」、「脳血管疾患」を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。
生活習慣病は様々な種類がありますが、代表的なものには次のような疾患が挙げられます。

生活習慣病の種類

糖尿病

糖尿病人間の体に必要なエネルギーの1つに糖質があります。糖質は吸収後にブドウ糖に分解され、血液とともに全身に運ばれエネルギーとして使われます。血液に含まれるブドウ糖(血糖)の濃度を測定すると、血糖値が分かります。本来、血糖値は基準値内に収まるように機能するのですが、血糖値を下げる働きをする「インスリン」の量が減少したり不足することで、血糖値が高いままになり糖尿病を発症します。インスリンは膵臓から分泌される物質で、血糖を取り込むのに欠かせない存在です。
糖尿病には複数のタイプがあり、治療のアプローチは異なりますがどれも治療は必要です。そのままにすると、疲れやすくなる、のどの異常な渇きといった症状が現れます。そして長期間血糖値が高い状態が続くと、合併症が進んでしまいます。

高血圧

高血圧血管の壁にかかる血液の圧力を血圧と言います。心臓のポンプ機能により、体中に血液が送られて全身を巡っています。心臓が全身に血液を送り出す際に血管の壁にかかる圧力を「収縮期血圧」と呼び、心臓が拡張した際に血管の壁にかかる緩やかな圧力を「拡張期血圧」と呼びます。よく「上の血圧」、「下の血圧」と言いますが、それが「収縮期血圧」と「拡張期血圧」です。血圧が高い状態が続くと、心臓や腎臓、血管に悪影響を与え、心不全や腎不全、動脈硬化を引き起こします。

原因

  • 塩分の摂りすぎで体内の塩分濃度が高くなると、血液量を増やして薄めようと働くため、血圧が高くなります。
  • 肥満になると、その分血液量も増加し、血圧が上がって心臓に負担がかかるので注意が必要です。
  • ストレスを感じることで交感神経が優位になり、心拍数が高い状態や血管の収縮が起きるため、高血圧に繋がります。
  • 乱れた生活習慣により自律神経が失調し、交感神経が活発になることで、血圧が上がる場合があります。
  • 運動不足は血行不良を招き、血圧が上がりやすくなります。
  • 喫煙で体内にニコチンが取り込まれ、交感神経が優位になり血圧が高くなります。さらに、活性酸素が血液の中で増えることで、動脈硬化も促進されて血圧が上がります。
  • 「二次性高血圧症」の1つである原発性アルドステロン症は、アルドステロンという副腎から分泌されるホルモンが多くなり、高血圧に繋がります。
  • 腎動脈狭窄症では、動脈硬化により腎臓への動脈が細くなり、腎臓の血流が低下することでレニンが多く分泌され、血圧上昇に繋がります。
  • 「二次性高血圧症」の1つである褐色細胞腫では、カテコラミンという物質が分泌され過ぎることにより、血圧上昇を招きます。
  • 睡眠時無呼吸症候群では、寝ている際に呼吸が止まり、呼吸を再開する際に脳が覚醒反応を起こし、交感神経が働くことで血圧が高くなります。
  • 甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが活発化して心拍出量の増加や交感神経の活性化などが起き、血圧が高くなります。

症状

高血圧はあまり症状が現れない場合が多いので、健康診断で血圧の高さを指摘されて初めて気づく方も多いです。血圧が高いことに気付かず放置していたり、症状がないからといって血圧が高い状態をそのままにしたりすると、少しずつ頭痛、肩こり、動悸、頭がボーっとしてすっきりしないといった症状を感じることがあります。ただ、これらはどれも軽度の症状であり、さらに病状が進行すると、心不全や腎不全、動脈硬化による狭心症や脳梗塞を発症する恐れがあります。健康を害する事態を招かないために、症状が軽くても病院を受診しないままでいるのはお勧めできません。症状が現れたら、体からのSOSのサインだと受け止め、放置しないようにしましょう。

治療法

高血圧を治療することで、脳卒中や心筋梗塞といった合併症の予防効果が期待できます。
高血圧は、乱れた生活習慣を見直すことと薬物療法の2つで改善を目指します。
生活習慣では、肥満、塩分の摂りすぎ、運動不足、タバコ、ストレスといった血圧上昇に関わる習慣を見直すことが必要です。

まず、一日の塩分は6g未満に抑え、果物や野菜を多く摂取しましょう。飽和脂肪酸やコレステロールが多い食品は控えて頂きます。ただし、重度の腎障害がある方は、果物や野菜を多く摂ることはお勧めできません。また、糖尿病の方は果物を多く摂ると、カロリーオーバーになる可能性があります。
食生活だけでなく、体重をコントロールして増えすぎに気を付けましょう。有酸素運動を毎日30分以上行い、習慣化することで運動不足を解消します。その他、禁酒、禁煙も検討しましょう。

薬物療法としては、内服薬の治療となります。1種類のお薬でコントロールできる場合もあれば、何種類かを組み合わせることもあります。「血圧の薬」には様々な種類があり、心臓の病気がある場合、尿検査をして蛋白尿がある場合、糖尿病がある場合など、患者さんの背景によって治療薬を調整します。当院では、それらの薬を熟知した循環器専門医が、個々の患者さんに合わせて治療薬を提案いたします。

脂質異常症

脂質異常症脂質異常症は、血液に含まれる脂質である悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセリド:TG)が多すぎる、もしくは善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少なすぎる状態を指す病気です。コレステロールが高いと言われた場合、LDLコレステロールの値が高いことを意味します。

脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの原因となる病気であり、糖尿病や高血圧などと同じように治療が必要です。はじめのうちは目立つ症状が現れないため、健診で引っ掛かり気づくことが多いです。早めに発症に気づき、薬物療法や規則正しい生活習慣で改善を図ることが大切です。

原因

脂質異常症は、肥満、食べ過ぎ・飲み過ぎ、タバコ、運動不足、ストレス、過度な飲酒などが引き金になるとされています。なかでも、腹部に脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満は、LDLコレステロールや中性脂肪が増加し、HDLコレステロールは減少することが多いです。ただ脂質異常症は生活習慣だけではなく「体質」の影響も大きいと考えられており、食事や運動習慣を改善しても、なかなか数値が良くならないこともしばしば経験します。

中でも「家族性高コレステロール血症」は、遺伝的要素が原因で、LDLコレステロールがものすごく上昇する病気で、動脈硬化の進行が速いことが分かっています。遺伝的要素が原因ではないタイプと比較してその差は明らかに異なります。家族性コレステロール血症は200-500人に1人程度発症すると考えられており、診断は、①LDLコレステロール値が180 mg/dl以上、②アキレス腱が分厚くなるなどの腱黄色腫がある、③血縁関係のある両親、祖父母、兄弟に家族性コレステロール血症の方がいる、また男性の場合55歳未満、女性の場合65歳未満で心筋梗塞になった方がいること、となっています。

症状

脂質異常症は、目立つ症状が現れない場合がほとんどです(LDLコレステロールが若いうちから高い方は除きます)。家族性コレステロール血症の診断基準にもありますが、手の甲や肘、膝などに、黄色腫というコレステロールが溜まったことで生じる、白い塊の斑点ができたり、アキレス腱が分厚くなったりします。
脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれます。それはコレステロールや中性脂肪が高くてもほとんど症状はありませんが、知らず知らずのうちに動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を発症してしまうことがあるからです。健診異常などで、脂質異常症が指摘された場合、専門医に相談することが大切です。

治療法

脂質異常症は、生活習慣が原因で悪化する場合が多く、まずは生活習慣を正すことが必要です。ただ脂質異常症は生活習慣だけではなく「体質」の影響も大きいと考えられており、食事や運動習慣を改善しても、なかなか数値が良くならないこともしばしば経験します。
食事療法、お酒やタバコを控える、体重のコントロール、運動療法を続けていくと、お薬に頼らなくてもコレステロール値が改善する方もいます。また、増えすぎた体重を減らしてコレステロール値を改善することで、別の生活習慣病(脂肪肝、糖尿病、高血圧など)の改善にも繋がります。
生活習慣を見直しても十分な効果が得られない場合や、家族性コレステロール血症などのように遺伝的に脂質異常症を来している場合、薬物療法を行います。LDLコレステロールが高い方は、スタチン系のお薬を推奨しています。中性脂肪が多い方は、フィブラート系のお薬で改善を図ります。以前の薬剤では、スタチンとフィブラートの併用はできませんでしたが、最近の薬剤では併用ができるものもあります。他にもエゼチミブ、EPA製剤、また注射薬であるPCSK9阻害薬を使用することもあります。
脂質異常症にも治療の目標値があり、患者さんの背景(年齢、糖尿病があるか、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞をされたことがあるかなど)により目標値は異なります。当院では脂質異常症の薬剤治療の経験が豊富な循環器専門医が、個々の患者さんに合った治療法を提案いたします。

高尿酸血症(痛風)

高尿酸血症(痛風)高尿酸血症は、血清尿酸値が7.0mg/dl以上になった状態を指します。成人の男性の約20%が発症するとされ、特に30~40歳頃の男性がかかりやすい傾向があります。尿酸値は女性ホルモンによって上昇が抑えられるので、女性で高尿酸血症にかかる人はそれほどいません。目立つ症状がないからと治療しないままでいると、突然足の親指に強い痛みと腫れが生じ、痛風発作が起こります。痛風は、約100万人の男性が症状に悩んでいるとの報告もあります。(平成25年の国民生活基礎調査)さらに、尿酸値が高いままだと、体中に尿酸が溜まってしまい、痛風以外にも様々な合併症(腎障害や尿路結石など)を併発する恐れがありますので、症状がないからといって長期間放置するのはお勧めできません。健康診断などで高尿酸血症や腎障害が判明したら、早めに治療を開始するためにも医師に相談しましょう。

原因

尿酸はプリン体という細胞の中にある物質から作り出されます。体内のプリン体の多くは体の中で作られますが、約20%が食べ物に含まれるプリン体です。このプリン体により尿酸が作られ、一定量に維持され(尿酸プール)、増えすぎた尿酸は尿とともに体外に排泄される仕組みになっています。この仕組みがうまくいかなくなることで高尿酸血症を発症します。原因は、暴飲暴食、お酒の飲み過ぎに遺伝的な要因が重なって起こるとされていますが、がん、腎臓疾患、血液疾患、お薬の影響などが関係している場合もあります。

症状

高尿酸血症の症状は特にありませんが、痛風発作によって膝、足、腰、肩、手、肘といった体中の関節に激しい痛みと腫れが生じます。はじめのうちは短い時間で痛みが治まりますが、何度も症状を繰り返すと慢性化して、長い時間痛みを感じるようになります。

治療法

痛風の症状が起きている場合、痛みや腫れを抑えることを優先します。具体的にはロキソプロフェンなどの消炎鎮痛薬や、コルヒチンという薬剤を使用します。足の親指が激痛に襲われるケースが多いですが、その他の部位でも症状は現れることもあります。痛みは数日~2週間程継続し、少しずつ治まっていきます。
痛風発作を起こしたことがある患者さんの場合、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えたままだと再度痛風発作を起こす可能性があり、尿酸値を下げる治療を行います。痛風発作を起こさないように、尿酸値を徐々に下げていき、大きく変動しないように注意して行います。
(高尿酸血症の治療が初めての方は、痛風の症状がある時に尿酸値を下げるお薬は使わずに、痛みがなくなってから治療を始めていきます。痛みがある時に高尿酸血症の治療を行うと、症状がさらに酷くなる恐れがあるためです。)
高尿酸血症は、食事療法や運動療法を行って肥満を解消し、増えすぎた体重を適正に維持してコントロールすることが大切です。さらに、プリン体を過剰摂取しないように食事制限を行い、尿酸値が上がらないようにしていきます。プリン体が多く含まれていることで知られているビールですが、それ以外のお酒を飲んでも尿酸値は上がりやすくなるので、なるべくお酒を控えて頂くことが必要です。
運動療法では、週3回ほど軽い有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を継続しましょう。医師のアドバイスを聞きながら運動内容を決めるようにしましょう。
生活習慣を見直しても改善が見られない、他の病気の治療もしている、痛風発作や痛風結節がある方は、薬物療法で治療を行い、尿酸値が6.0mg/ dL以下になるように目指します。尿酸排泄促進薬や尿酸生成抑制薬などを使用しますが、急に尿酸値が下がらないように注意する必要があります。尿酸値が改善してからも尿酸の塊である結晶が溶けるまで根気強く治療を継続してください。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームメタボリックシンドロームは、内臓の周りに脂肪が蓄積し(ウエストが男性で85cm以上、女性で90cm以上)、高血圧、高血糖、脂質異常のいずれか2つが当てはまる状態を指します。
メタボのままでいると、動脈硬化が進み、やがて脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を発症する恐れがあるので注意が必要です。ただがメタボと軽視せず、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の治療をしっかり受けて動脈硬化を防ぎ、重篤な病気を引き起こさないようにすることが重要です。

生活習慣病を予防する・
早期に発見するために

生活習慣病を予防する・早期に発見するために健康診断を定期的に受け、自分の体の状態を把握することは、いつまでも健康で生活するために重要です。病気を放置すると、重症化するリスクが高まり、元気な毎日を過ごすことができなくなる恐れがあります。症状がないからといって、乱れた生活習慣を続けた場合、病状は悪くなっていき、「心筋梗塞」「脳梗塞」「脳出血」「狭心症」などを引き起こすリスクも高まってしまいます。生活の質の低下に繋がり、介護や介助なしでは生活できなくなることもあります。このような事態を招かないために、健康診断の定期的な受診や規則正しい生活習慣を心がけ、日常生活を過ごすことが重要です。

日々の習慣で予防する

  • 運動不足の解消し、適度な運動を行う
  • 栄養バランスの整った食生活
  • お酒の飲み過ぎに注意する
  • 禁煙する

上記のような習慣を日々の生活で意識し、病気を予防しましょう。

定期的に健康診断を受ける

定期的に健康診断を受けて自分の体の状態を把握しましょう。
当院の健康診断をお受け頂いた方には、検査結果をしっかりご説明し、必要に応じて生活習慣病の管理も実施します。ご興味がある方はお気軽に当院までご相談ください。

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