胸の痛み・
締め付けられる感じは
ストレス?病気?
胸には心臓や肺といった、重要な臓器があります。その胸が痛い、締め付けられるという時には、大きな病気をイメージする方も少なくないかと思います。一方で、特にすぐに治まった場合には、「気のせいだろう」と放置されがちな症状でもあります。
疑われる病気は、狭心症、心筋梗塞、肺炎、気胸、肺塞栓症、逆流性食道炎など、さまざまです。また、肋間神経痛や、筋肉・骨格系の痛みなど、症状はあるけれども治療までは必要ないこともあります。いずれにせよ、胸の痛みや締め付けられる感じが一度でもあった時には、医療機関で検査を受け、その原因を明らかにして対処・治療することが大切になります。
胸のどの辺り
(左・右・真ん中)が痛むのか
胸のどのあたりが痛むのかによって、おおよその病気の見当をつけることが可能です。
受診の際には、痛む部位だけでなく、痛むタイミング、頻度、他の症状の有無なども医師にお伝えください。
痛む部位 |
特徴 |
考えられる病気 |
---|---|---|
前胸部 |
圧迫されるような胸痛があるが15分以内に治まる |
狭心症 |
風邪になった時に痛み咳・深呼吸で痛みが増す |
心膜炎 |
|
左胸~中央部 |
強く締め付けられるように痛み15分以上続く |
心筋梗塞 |
胸~背中・腰 |
立っていられないほどの激しい痛み |
大動脈解離 |
肋骨・背骨 |
咳・深呼吸をした時に痛む |
肋間神経痛 |
胸の表面 |
レントゲン検査・CT検査・MRI検査などで異常が見つからない胸痛 |
肋間神経痛、筋肉・骨格系の痛み |
身体を動かした時や咳・深呼吸をした時に痛む |
肋骨骨折 |
胸の痛み・
締め付けられる場合に
考えられる病気
胸の痛み・締め付けられる感じがある場合に疑われる疾患を、肺・気道、心臓・血管、神経・筋肉・骨、消化器などに分けてご紹介します。
肺や気道の病気
胸の痛みや締め付けられる感じがある場合に疑われる「肺や気道の病気」の特徴をご紹介します。
肺炎、胸膜炎
細菌やウイルスなどの病原体の感染を原因として起こる「肺炎」や「胸膜炎」は、どちらも肺の機能低下を招きます。酸素を十分に取り込めないことから、肺炎では胸の苦しさを感じます。胸膜炎では肺を包んでいる胸膜に炎症が起きるために、息を大きく吸ったときなどに胸の痛みを感じます。その他、咳、痰、発熱などの症状も見られます。
気胸
肺に穴があいて空気が漏れ、肺が萎縮してしまう病気です。主な症状として、胸の痛み、咳、呼吸困難などが見られます。特に多いのが胸の痛みで、気胸を起こしている側(左・右)の肺に痛みが認められます。胸部レントゲン検査で診断できます。
気管支喘息
アレルギー反応が起きることで、気管支が狭くなる病気です。放置して慢性化すると、急な咳き込み、喘鳴、息苦しさなどの症状が起こります。吸入薬を使用することで、症状が改善することが多いです。
肺塞栓症
肺の血管が詰まる病気です。下肢の静脈に血栓が生じる「深部静脈血栓症」に合併することが多くなります。
長時間座っていた・寝ていた後、動いた時に息苦しさを感じます。また、肺の動脈に血栓が詰まることで全身の臓器への酸素供給が滞り、呼吸困難、胸の痛み・圧迫感、むくみなどの症状が引き起こされます。
心エコー、心電図検査、血液検査で、肺塞栓症を疑う所見があれば、造影CT検査で診断をつけます。治療としては、抗凝固薬という飲み薬を使用し、血栓を溶かしたり再発を予防したりします。
心臓や血管の病気
狭心症・心筋梗塞
心筋に栄養・酸素を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりする「狭心症」、冠動脈が完全に塞がる「心筋梗塞」はいずれも胸の痛みを伴います。狭心症の場合は15分以内に治まりますが、心筋梗塞の場合は30分以上持続します。その他、動悸、息切れ、むくみ、腕・肩・歯・顎の痛み、冷や汗など、さまざまな症状が見られます。
循環器専門医であれば、症状の問診、心電図、血液検査、心エコー検査で診断できることが多いです。緊急を要する場合は、連携する医療機関で緊急治療を受けて頂きます。
大動脈解離
大動脈は、内膜・中膜・外膜の3層に分かれています。このうち、中膜に血液が流れ込み、大動脈が拡大した状態が「大動脈解離」です。胸や背中の強烈な痛み、苦しさなどの症状を伴います。
症状の問診、血液検査、レントゲン検査で、大動脈解離を疑う所見があれば、造影CT検査で診断をつけます。命に関わるため、入院して治療しなければならない病気です。
不整脈
心臓の拍動のリズムが乱れている状態です。脈が速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、脈が飛ぶ(期外収縮)といったような乱れが認められます。
特にこのうち、1分間の脈拍が120回以上となるような頻脈性不整脈や、40回以下になるような徐脈性不整脈では、直ちに治療が必要となる場合があります。症状としては、動悸、息切れ、胸痛、めまい、失神などが挙げられます。心電図検査や、24時間ホルター心電図検査で診断をつけます。お薬で治療する場合もあれば、カテーテルアブレーションやペースメーカー治療が必要になることもあります。
心不全
狭心症、心筋梗塞、高血圧症、心臓弁膜症などを原因として、心臓の機能が低下してしまった状態を指します。
胸の苦しさ、動いた時の息苦しさなどの症状、原因疾患に伴う症状などが見られます。
心電図、心エコー、血液検査、レントゲン検査などで診断をつけます。さらなる検査や治療が必要な場合は、連携する医療機関にご紹介します。心不全は完治する病気ではないため、生涯付き合っていかなければなりません。循環器専門医のもとで、適切な治療を受けましょう。
神経・筋肉・骨の病気
肋間神経痛
肋骨に沿って走る肋間神経が障害され、胸部の左右どちらか片側に、限局的な強い痛みが出る状態です。
疲労、風邪、打撲、骨折などを原因として発症するものと、病気やケガ以外の原因(ストレスなど)によって発症するものがあります。
帯状疱疹
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染して「水ぼうそう」にかかると、その後治癒してもウイルスは体内に潜んでいます。そして体力が低下した時などに再度ウイルスが活性化して発症するのが「帯状疱疹」です。身体の左右どちらかに帯状に紅斑・水ぶくれが広がり、ピリピリ・チクチクする強い痛みを伴います。
肋骨骨折
肋骨を骨折した場合には、胸に痛みが出ます。通常、安静時には鈍い痛みが、動いた時には鋭い痛みがあります。
重度の骨粗鬆症の方は、咳やくしゃみなどで肋骨を骨折してしまうことがあるため、注意が必要です。
消化器の病気
逆流性食道炎
加齢に伴う下部食道括約筋の緩み、胃酸の過剰な分泌、腹圧の上昇などを原因として胃酸が何度も逆流し、食道粘膜で炎症を起こす病気です。胸の痛みや苦しい感じ、胸やけ、胃もたれ、咳などの症状が見られます。
その他の消化器疾患
胆嚢疾患、急性膵炎などの消化器疾患も、胸の痛みを引き起こすことがあります。
その他
(ストレス・悪性腫瘍など)
ストレスによる自律神経の乱れやうつ病、肺がんなどを原因として、胸痛、胸が締め付けられるといった症状が引き起こされることがあります。
胸が痛い場合は
早めにご相談ください
胸痛は、腹痛ほど馴染みはないかもしれません。しかし、上記のようにさまざまな疾患によって引き起こされる症状であることが、お分かりいただけましたでしょうか。
中には、命の危険のある心臓の病気が原因になっていることもあります。一度でも胸痛、締め付けられる感じがあった場合には、お早めに当院にご相談ください。
受診の際にお伝えください
- 初めて症状を自覚したのはいつか、その後良くなったか悪くなったか
- どんな痛みか(チクチク、ズキズキ、ヒリヒリ、圧迫感がある、締め付ける等)
- 胸のどのあたりが痛むか
- 1回きりだったか、繰り返されるか
- 1回の痛みは、どれくらい続くか
- どんな時に痛むか(起き上がった時、安静時も、ストレスを感じた時等)
- 呼吸や咳によって痛みが強くなる
- 痛む位置の移動はないか
- 胸の痛み以外の症状の有無
上記のような情報は、検査の選択、診断に大変役立ちます。些細に思われることでも、医師にお伝えください。